2011年4月10日日曜日

自啓ノート(12) ~「自啓不止」~

4月10日

自啓ノートは、一昨年12月以来、実に16ヶ月ぶりの連載復活である。今日は、その中でも本命中の本命の言葉で、サッキーの座右の銘とでも言うべき「自啓不止」について概説したい。

「自啓不止」 一般の人にはなじみの薄い言葉かもしれない。

この言葉は、三井造船の社長・会長を経て、JR東日本の初代会長をされた故山下勇氏の造語である。
・読み方=じけいふし。みずからひらきてやまず(自ら啓きて止まず)。
・意 味=自己啓発し続けることが真の人生。つまり、生涯自ら進んで勉強を続けることが人生の大事であるということ。

三井造船玉野事業所の構内に「自啓不息」と書かれた石碑がある。ところが、JR東日本新津車両製作所内の石碑には「自啓不止」と書かれている。何れも、山下氏自筆の書を碑に刻み込んだもので、意味は同じものである。
中国の最も古い(約2,500年前)書物「易経」に、「天行健 君子以自彊不息」〔天行は健なり 君子もって自彊(ジキョウ)して息(ヤ)まず〕という一文がある。平たく訳すと、「天体の運行は自然で健全である。徳のある人(=君子)は自ら勉強を重ね、向上努力を怠ることはない。」という意味だ。

氏はこの「自彊不息」を分かりやすくするために、三井造船では「自啓不息」と書かれたと想像される。「彊」は「強」の古い漢字で、意味的には「強い」ではなく、「努める」(=努力)とか「勉める」(=勉強)として使われている。従って、自彊とは「自己啓発」のことを指す。
現代の日本人には、「自彊」では意味が分かりにくく、自己啓発を略した「自啓」の方がより素直に分かるだろうと配慮されたのではないかと思われる。
「息」は、呼吸の息だが、これには「止む」とか「止める」とかの意味がある。「休息」、「終息」、無病「息災」(=災いをなくして安寧な状態)などで使われている。でも今の若い人には、「息む」と書くよりも「止む」と書いた方が、より直接的で分かりやすい。
平成6年6月に建てられた新津車両製作所の石碑には、若い人たちのために、さらに平易な「自啓不止」と書かれたのである。

「言うは安く行うは難し」の典型的な言葉だが、諦めず最後まで勉めたいものである。サッキーも死ぬまで勉強を続けること、或いは死ぬまで勉強のできることが願いである。

上の写真は、平成4年7月に、JR東日本新津車両製作所の初代所長となった衣笠さん、製作所建設のキーマンだった生産管理課長の林さん、設計担当の後藤さんをお迎えして三井造船玉野事業所見学の案内をした折り、ディーゼル組立工場際にある「自啓不息」石碑の前で撮った写真。右端がサッキーである。
下の写真は、新津車両製作所事務本館前にある「自啓不止」の石碑である。因みに、この石碑にある山下勇の揮毫は、山下勇氏本人がこの石碑の建つ少し前に亡くなられた(平成6年5月没)ためお願いすることが出来ず、自啓不息の石碑にある揮毫から写し取られたものである。ということは、知る人ぞ知る情報である。



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